厚生労働省は2026年、AIを使った採用代行について、職業紹介事業の許可が必要になる範囲を明確にする方針を示しました。現在の厚生労働省サイトには、面接の質問、録画・文字起こし、評価を分けた具体例が掲載されています。

先に注意したいのは、AI面接を禁止した発表ではないことです。「AIだけで合否を決めてはいけない」という新しい規則でもありません。

今回の中心は、企業から面接業務を受託した外部事業者が、求職者と企業のやり取りにどこまで手を加えると、職業安定法上の職業紹介に当たり得るかという線引きです。受検者向けの規則ではありませんが、AI面接の機能を見分ける手がかりになります。

2026年の動き

政府は2026年7月21日、規制改革実施計画を閣議決定しました。その中に、AIを活用した採用代行について、職業紹介に該当するかどうかと、有料職業紹介事業の許可が必要になる条件を明確にする項目が入っています。

8月27日の労働政策審議会で、厚生労働省は次の対応を説明しました。

  • AIによる面接などが職業紹介に該当するかどうかを検討し、具体例を追記する
  • 都道府県労働局ごとに判断が分かれないよう、本省への照会などで統一する
  • AI採用代行サービスの機能や運用実態を調査する

現在、厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分について」には、面接に関する例4-6から4-8が掲載されています。ページ上に追加日の表示はないため、この記事では「何月何日に追加された」とまでは断定しません。2026年9月29日時点で掲載されている内容を確認しています。

面接で行う四つの動作

厚生労働省の例を、受検時に見える動きへ置き換えると、次のように整理できます。

面接サービスの動作厚生労働省の具体例受検者から見える違い
企業が事前に決めた質問をする回答の趣旨を明確にする範囲を超えなければ、例4-6が問題にする追加質問には当たらない質問が固定されている、または確認だけが続く
企業が決めていない質問を独自に加える回答の趣旨を明確にする範囲を超える場合は「意思疎通の加工」に該当回答内容に応じて、新しい論点を深掘りされる
録画・録音し、文字起こしや日付付記をして企業へ渡す面接内容を変えないため「意思疎通の加工」に該当しない録画や文字起こしが採用担当者へ共有される
回答を評価し、採用推奨などを付ける評価文を付ける、または企業へ提供するかを判断する行為は「意思疎通の加工」に該当点数、評価レポート、推薦結果などが作られる

ここでいう「意思疎通の加工」は、職業紹介に当たる行為を判断する基準の一つです。厚生労働省は、該当する行為をAIが自動で行う場合も、人が行う場合も、職業紹介事業の許可等が必要だと説明しています。

ただし、表の一行だけを見て、個別サービスに許可が必要かを外部から確定することはできません。誰が求職の申込みを受けるのか、企業との契約で何を任されているのか、情報を誰にどう渡すのかまで含めた実態で決まります。厚生労働省も、個別サービスについては都道府県労働局へ問い合わせるよう案内しています。

この記事は公式資料の一般向け解説です。個別事業の許可要否を判断する法的助言ではありません。

「AI面接」という名前では足りない

受検案内にAI面接と書かれていても、AIが担当する仕事は同じではありません。

録画を保存するだけの仕組みと、回答を文字にして整理する仕組みは、見た目がよく似ています。そこへ自動の深掘りや評価が加わると、企業へ渡る情報は変わります。

この違いは、受検者の準備にも関係します。

  • 固定質問型なら、制限時間内に一度で答え切る準備が必要
  • 対話型なら、最初の回答に理由や行動を入れ、追加質問へ答えられる材料も残しておく
  • 録画・文字起こし型なら、聞き取りやすさと話の順序を確認する
  • 評価レポートを作る型でも、非公開の配点を推測せず、質問に対応する事実をそろえる

録画型と対話型の見分け方では、受検案内から形式を確認する手順をまとめています。

公正な採用選考

職業紹介の許可とは別に、厚生労働省はAIを使う採用選考にも公正採用の原則が当てはまると説明しています。

公正採用選考のFAQでは、AIを含むどのような選考方法でも、応募の門戸を広く開き、本人の適性と能力に基づく採用基準にする必要があると明記されています。

つまり、AIが質問するから、仕事と関係の薄い情報を自由に集めてよいわけではありません。家族、住宅状況、本籍など、本人の適性や能力と関係のない事項は、人の面接と同様に注意が必要です。

受検中に意図が分からない質問が出ても、その場で法律違反だと決めつけるのは早いでしょう。質問文と表示内容を記録し、受検後に応募企業の問い合わせ先へ確認するほうが確実です。

AI面接の公平性を、同じ基準、仕事との関係、候補者への説明に分けた解説は、AI面接は人より公平?で確認できます。

公式資料からは言えないこと

今回の資料だけでは、次の結論は出せません。

  • AI面接そのものが違法になった
  • 回答に応じて深掘りするAI面接は、すべて職業紹介の許可が必要になった
  • AIだけで合否を決めることが一律に禁止された
  • 受検者がAIの点数や評価理由を必ず開示してもらえる

特に「意思疎通の加工に該当する」と「そのAI面接サービス全体が違法である」は別の話です。必要な許可を得て提供する場合もありますし、企業自身が自社の採用で使う場合と、外部事業者が企業に代わって行う場合でも前提が変わります。

AIが最終判断するか、人がどこに残るかについては、AI面接はAIだけで合否が決まる?で国内サービスの公開情報を分けて整理しています。

受検案内の確認欄

案内メール、プライバシーポリシー、応募企業の採用FAQで、次を探してください。

確認する記載分かること
質問は回答内容によって変わるか固定質問型か、対話・深掘り型か
録画、音声、文字起こしのどれを保存するか企業へ渡る元データの範囲
AIが評価やレポートを作るか記録だけか、評価支援まで行うか
採用担当者が何を確認するか録画、文字起こし、評価結果の使われ方
保存期間と問い合わせ先削除や配慮について確認する窓口

書かれていない項目があっても、その機能を使っていないとは限りません。分からない項目のうち、自分の受検に影響するものだけを応募企業へ確認します。

一方、許可番号を探して受検者自身が適法性を判定する必要はありません。今回の線引きは、まずサービス提供会社と企業側が確認すべき事業上のルールです。受検者は、何を聞かれ、何が保存され、誰が何を見て判断するのかを把握するほうが準備につながります。

今後の更新

厚生労働省は、AI採用代行サービスの機能、内容、範囲の実態調査を始めたと説明しています。調査結果を踏まえて、許可要件や義務の運用が見直される可能性があります。

今回の具体例は、現行法の考え方を明確にしたもので、新しい法律の成立を発表したものではありません。今後、指針、具体例、審議会資料が更新された場合は、このページでも確認日と変更点を追記します。

確認した公式情報

確認日:2026年9月29日